コンクリート診断士【凍害】

コンクリート診断士

コンクリートの「凍害」について教えて!

コンクリートの凍害は、コンクリート内部の水分が凍結と融解を繰り返すことで生じる劣化現象です。以下にその詳細を説明します。

凍害のメカニズム

  1. 凍結と膨張:
  • コンクリート内の水分が凍結すると体積が約9%増加し、内部圧力が発生します。
  • この圧力がコンクリートの引張強度を超えるとひび割れが発生します。
  1. 融解と再凍結:
  • 気温が上昇すると氷が融解し、再び水に戻ります。
  • その後、再び凍結するとさらに圧力が加わり、ひび割れが拡大します。
  1. 繰り返しのサイクル:
  • 凍結融解サイクルが繰り返されることで、内部の微細なひび割れが成長し、最終的に大きな損傷や剥離を引き起こします。

主な現象

  • スケーリング: 表面が剥がれる現象。
  • ひび割れ: コンクリート内部に細かい亀裂が生じる。
  • 剥離(ポップアウト: コンクリート表面が剥がれ落ちる。

凍害の予防策

  1. AE剤やAE減水剤の使用:微細な空気泡をコンクリートに導入することで、凍結時の圧力を吸収し、ひび割れを防ぎます。
  2. 適切な混合設計:水セメント比を低くし、コンクリートの密度を高める。
  3. 防水処理:コンクリート表面に防水処理を施し、水分の浸透を防ぎます。

一度の凍結だけでは、凍害は発生しないの?

一度の凍結だけでは通常、凍害は発生しません。凍害は、コンクリート内の水分が凍結と融解を繰り返すことで、内部圧力が蓄積し、ひび割れや損傷を引き起こす現象です。これが繰り返されることで、ひび割れが拡大し、最終的に表面の剥離(スケーリング)や内部構造の劣化が進行します。したがって、凍害は繰り返しの凍結融解サイクルによって進行するものです。

例えば、建物の場合、日中に日差しを受けて温度が上がる南面の方が、北面に比べて凍結と融解のサイクルが多くなり、凍害が発生しやすい傾向にあります。

凍害の発生条件
  1. 繰り返しの凍結融解サイクル:
  • 水が凍結するときに膨張し、融解するときに収縮する。このサイクルが繰り返されることで、内部にストレスが蓄積し、ひび割れが発生する。
  1. 水の存在:
  • コンクリート内の毛細管孔や微細なひび割れに水が浸入し、凍結融解サイクルのたびに膨張圧が発生する。
  1. 低温環境:
  • 気温が0℃以下になる環境で凍結融解サイクルが頻繁に発生することが必要。

ポップアウト」とは?

ポップアウトとは、コンクリート表面に発生する小さな円形または楕円形のくぼみや穴のことを指します。これは、コンクリート内部の粒子(骨材)が膨張して表面を押し上げ、最終的に剥離してしまうことで生じます。ポップアウトは凍害やASRなどが原因で発生します。

また、コンクリートに含まれるMgO(酸化マグネシウム)は、含有量が多いとコンクリート中で水と反応して水酸化マグネシウム (Mg(OH)₂) を生成し、体積が増加します。この膨張が内部圧力を引き起こし、ポップアウトを引き起こすことがあります。ポップアウトは、凍結融解サイクルによる膨張と収縮の影響を受けやすく、MgOの膨張もこれに寄与します。


凍害が起こりやすくなる要素・環境には、何がある?

凍害が起こりやすくなる要素

凍害はコンクリートの様々な要素と複合的に関係しています。以下に主な要素とその関係を説明します。

水セメント比 (W/C比)

  • 低い水セメント比はコンクリートの密度を高め、空隙を減少させるため、凍害に対する抵抗性が向上します。一方、高い水セメント比は空隙が増え、水分が浸透しやすくなり、凍害のリスクが高まります。

軽量骨材

  • 軽量骨材は吸水性が高く、凍結時の膨張圧を緩和する効果があります。適切な軽量骨材の使用により、凍害に対する耐性が向上します。

混和剤の使用

  • 凍結防止剤や防水剤などの混和剤を適切に使用することで、水分の浸透を抑え、凍害を予防することができます。ただし、塩化物系の凍結防止剤は塩害のリスクを伴います。

コンクリートのかぶり厚さ

  • 十分なかぶり厚さを確保することで、内部の鉄筋を保護し、凍害やそれに伴う腐食から構造物を守ることができます。

施工と養生

  • 適切な施工と養生が行われないと、凍害のリスクが増加します。特に初期の養生期間中に凍結を避けることが重要です。

環境条件

  • 繰り返しの凍結融解サイクルが発生する寒冷地では、凍害のリスクが高まります。これらの地域では、特に耐凍害性に優れたコンクリートが求められます。

コンクリートの劣化原因が、凍害であると判断する為の調査方法は?

凍害の調査方法

コンクリートの劣化原因を凍害と確定するためには、以下の調査を行います:

視覚的検査

  • スケーリング: 表面の剥離や剥がれの有無を確認します。
  • ひび割れ: 特に表面に沿ったひび割れのパターンを観察します。

コアサンプルの採取と分析

  • コアドリル: コンクリートのコアを採取し、内部の状態を詳しく調査します。
  • 顕微鏡観察: コア断面を顕微鏡で観察し、凍害による微細なひび割れや空隙の拡大を確認します。

物理的試験

  • 圧縮強度試験: コアサンプルの圧縮強度を測定し、劣化の程度を評価します。
  • 吸水率試験: 吸水率を測定し、コンクリートの透水性や空隙率を評価します。

環境データの調査

  • 過去の気象データ: 寒冷地での凍結融解サイクルの頻度を確認します。
  • 現地観測: 現地の温度変動や湿度の記録を収集します。

化学分析

  • 塩分含有量の測定: 凍結防止剤の影響を評価するために塩分含有量を測定します。
  • 水分含有量の測定: コンクリート内の水分量を測定し、凍害の影響を評価します。

非破壊検査

  • 超音波検査: 内部のひび割れや空隙を検出します。
  • レーダー検査: 地中レーダーで内部構造の劣化状態を確認します。

凍害を受けたコンクリートの対処(補修・補強)法は?

凍害を受けたコンクリートの対処法

凍害を受けたコンクリートの対処方法は、以下のような補修・補強法があります。

補修方法

表面補修
  • ポリマーセメントモルタル: ひび割れやスケーリングを修復します。
  • エポキシ樹脂注入: 微細なひび割れにエポキシ樹脂を注入し、強度を回復させます。
深部補修
  • コンクリートの取り替え: 深刻な損傷部分を取り除き、新しいコンクリートで補修します。
  • 部分打ち替え: ダメージが局所的な場合、その部分のみを新しいコンクリートで打ち替えます。

予防策

  • 防水処理: 表面に防水剤を塗布し、水分の浸透を防ぎます。