コンクリート診断士【劣化根拠・調査・対策】

コンクリート診断士

ひび割れ根拠

コンクリート構造物に発生するひび割れは、その位置や形状から原因を特定することができます。以下に、各ひび割れのタイプとその特徴を具体的な例を交えながら分かりやすく紹介します。

熱膨張

  • 発生箇所: 建物の上部角部
  • 原因: 日中の温度変化や太陽光による加熱によって、コンクリートが膨張・収縮を繰り返すことによる。
  • 特徴: 角部から斜め下方向に向かって「ハの字」型に広がるひび割れ。特に夏季の昼間に直射日光を受けやすい建物の屋根や上部壁の角部で見られる。

乾燥収縮

  • 発生箇所: コンクリート壁面全体
  • 原因: 硬化後のコンクリートが乾燥する過程で水分が蒸発し、体積が収縮することによる。
  • 特徴: 壁面に沿って縦方向に発生するひび割れ。壁の長さ方向に沿ってまっすぐに伸びる。特に乾燥が急激に進行する環境下で見られる。

窓四隅の乾燥収縮

  • 発生箇所: 窓や開口部の四隅
  • 原因: 窓枠周辺のコンクリートが乾燥収縮により引張応力を受けることによる。特に窓の角部は応力が集中しやすい。
  • 特徴: 窓の四隅から斜め方向に向かって伸びるひび割れ。新築の建物や急激な乾燥が進行した場合に見られる。

アルカリシリカ反応(ASR)

  • 発生箇所: コンクリート全体、特に湿度の高い環境下の構造物
  • 原因: コンクリート中のアルカリとシリカが反応して生成される膨張性のゲルがひび割れを引き起こす。
  • 特徴: 網目状、亀裂模様のひび割れ。広範囲にわたってランダムに広がる。湿潤な環境や地下構造物、橋梁などで見られる。

プラスティック収縮

  • 発生箇所: コンクリート打設直後の表面
  • 原因: 表面の急激な水分蒸発により、コンクリート内部に引張応力が発生。
  • 特徴: 表面にランダムに発生し、浅いひび割れが多い。特に風が強い日や高温の日に見られる。

沈下ひび割れ

  • 発生箇所: 打設直後のコンクリート内部
  • 原因: コンクリート内部の材料の沈降による体積減少により、鉄筋や型枠の上に引張応力が発生。
  • 特徴: 鉄筋の上や型枠の境界部分に沿って縦に発生する。特に振動や振動が不十分な場合に発生しやすい。

凍結融解

  • 発生箇所: 寒冷地のコンクリート表面
  • 原因: 凍結と融解の繰り返しにより、内部に水分が凍結・膨張して引張応力が発生。
  • 特徴: 表面に細かいクラックが多数発生し、場合によっては剥離が進行。特に防水処理が不十分な場合に発生しやすい。

構造的ひび割れ

  • 発生箇所: 構造物全体
  • 原因: 過剰な荷重、設計不良、施工不良、地盤沈下など。
  • 特徴: 柱や梁に沿った大きなクラックが発生することが多く、構造の安全性に直結する。特に地震後や重い荷重がかかる場所で見られる。

ひび割れ調査

ひび割れの深さなどの代表的な調査方法は以下の通りです。

超音波法

  • 方法: 超音波をコンクリートに送信し、反射波を受信してひび割れの位置と深さを測定します。
  • 特徴: 超音波法はひび割れの深さだけでなく、ひび割れの連続性や貫通の有無も検出できます。

電磁波レーダー検査法

  • 方法: 高周波の電磁波をコンクリートに送信し、反射波を解析して内部構造を調べます。
  • 特徴: ひび割れの深さだけでなく、鉄筋の配置や位置も検出できます。

サーモグラフィー法

  • 方法: 表面温度分布を測定し、温度変化から内部のひび割れや空隙を検出します。
  • 特徴: 表面近くのひび割れ検出に有効です。

ひび割れ対策

コンクリートのひび割れに対する対応策は、ひび割れの深刻度に応じて異なります。以下に、軽度、中度、重度のひび割れに対する一般的な対応策を説明します。

軽度のひび割れ

軽度のひび割れは、主に美観や表面のわずかな損傷に影響するもので、構造的な問題を引き起こす可能性が低いひび割れです。

対応策
  • シーリング材の使用: ひび割れにシーリング材を充填し、水の浸入を防ぎ、表面の美観を改善します。適切なシーリング材を選び、ひび割れに沿って均一に充填します。
  • 表面コーティング: 防水性の高い塗料やコーティング材を表面に塗布し、ひび割れの進行を防ぎます。
  • 定期的なモニタリング: ひび割れが進行しないか定期的に観察し、必要に応じて追加の補修を行います。

中度のひび割れ

中度のひび割れは、構造に一定の影響を与える可能性があり、早期に対応することが望まれるひび割れです。

対応策
  • エポキシ樹脂注入: エポキシ樹脂をひび割れ内部に注入し、ひび割れを封止し、構造的な結合力を回復します。適切な注入機器を使用して、ひび割れ全体に均一に樹脂を浸透させます。
  • 表面修復モルタル: ひび割れ部分を一度削り取り、修復用のポリマーセメントモルタルを用いて再度充填し、表面を平滑に仕上げます。
  • 炭素繊維シート: 炭素繊維補シートをひび割れ部分に貼り付けて補強し、さらなるひび割れの進行を防ぎます。

重度のひび割れ

重度のひび割れは、構造的な安全性に重大な影響を与える可能性があり、迅速かつ徹底的な対応が必要です。

対応策
  • コンクリートの部分的再構築: ひび割れ部分を完全に取り除き、新しいコンクリートで再構築します。この際、鉄筋の補強も併せて行い、構造的な強度を回復させます。
  • 鋼板補強: ひび割れ部分に鋼板を貼り付けて補強し、構造の安定性を確保します。鋼板は適切に設計され、必要な強度を持つものを使用します。