福祉住環境コーディネーター1級 2023年【後半】試験

2023年

2023年の試験問題はコチラ。「禁無断転載」とありますので、問題文は載せられませんが、試験の解答と解説を行っていきます。

※この解説は、個人が作成したものであり、公式のものではありません。そのため、内容に誤りが含まれている場合があります。もし間違いを見つけた場合は、「お問い合わせ」フォームからご連絡ください。

第1問

設問(1)

解答例(92文字):
「高齢者世帯が増加することで、独居高齢者や高齢夫婦世帯の孤立や生活支援の不足が課題になる。対応策として、地域での見守り活動や地域包括支援センターなどを活用した支援体制の強化が必要となる。」

ポイント:キーワードを盛り込んだ、読みやすい文章構成がカギとなります。具体的には、以下のように進めます。
①表から読み取れる事実を把握する
表1には、高齢者の世帯形態に関する将来推計が示されています。いきなり、このような問題で面喰いますが、冷静に表を見てみると、一般世帯の減少、高齢世帯の増加、単独世帯の増加などが読み取れます。
②地域社会における将来的な課題を特定する
上記①を踏まえて、例えば、単独高齢者世帯では社会との接点が少なく、孤立や精神的負担が増加する。あるいは、生活支援(買い物、掃除、通院など)が不足しやすい。…といった課題が導き出せます。
③課題に対する対応策を考える
設定した課題に対して、「地域包括支援センター」などのキーワードを入れて、対応策を考えます。汎用性の高い別案としては、ICT技術の活用(スマートフォンや見守りセンサーを活用して高齢者の状況を把握)などが考えられます。

設問(2)

解答例(194文字):
新オレンジプランは認知症高齢者が尊厳を保ちながら住み慣れた地域で暮らし続けられる社会の実現を目的とし、理解促進や地域支援体制の強化を基本とする。福祉住環境コーディネーターとしては、認知症特有の行動に配慮した住環境整備(迷いやすさを軽減する目印の設置、転倒防止のための手すりや段差解消など)を提案し、啓発活動や地域の関係者間の連携強化を支援することで、安心して暮らせる環境づくりに貢献する。

ポイント:まずは、「新オレンジプランの目的・基本的な考え方」を示し、その後に「福祉住環境コーディネーターとして関与できること」を書くのが、分かりやすいと思います。
①新オレンジプランの目的と基本的な考え方を明示する
解答の冒頭で、新オレンジプランの目的(「認知症の人が尊厳を持って地域で暮らせる社会の実現」)と、基本的な考え方(「早期対応」「地域包括ケアの推進」「理解促進」など)を簡潔に述べます。
これは解答の土台となり、後の具体的な行動案の背景説明になります。
②福祉住環境コーディネーターの役割を具体化する
上記①に対して、その実現の為に自分ならどうするかを考えてみます。その際、100%の正解を目指す必要はありませんが、「認知症への理解を深める普及・啓発の推進」や「認知症の人を含む高齢者に優しい地域づくりの推進」のような表現を使えると得点が高いと思われます。書き慣れないと、このような表現を使うこと自体が難しいと思いますので、受験対策として押さえておきましょう。

設問(3)

解答例(203文字):
福祉住環境コーディネーターとして、①外出しやすい環境づくりでは、玄関や敷地周辺の段差解消、手すりの設置、車椅子対応のスロープ設置を提案し、高齢者が安全かつ自立的に外出できる環境を整備する。②地域活動の拠点整備では、バリアフリー設計の集会所や公園を推進し、交通アクセスを考慮した立地選定や多世代交流イベントの開催を支援する。これらにより、安心して外出し、社会とつながる機会を増やし、閉じこもり防止に寄与する。

ポイント:設問にある通り、「外出しやすい環境づくり」と「地域活動の拠点整備」という2つの観点を明確にして解答する事が得点につながります。その為には、解答例のように①②などの番号を活用するのも有効です。また、要求の文字数に応じて、最後に“まとめ”的な一文を持ってくることもアリです。

第2問

設問(1)-1

解答例1.公共施設や建物への段差など物理的なバリア
    2.障害者に対する偏見や誤解による雇用の機会不足


ポイント:ユニバーサルデザイン2020行動計画では、「障害は個人の心身機能の障害と社会的障壁の相互作用によって創り出されているもの…」とあり、心身機能の障害の対として社会的障壁が語られています。つまり、社会的障壁とは心身機能の障害以外の部分として広義に理解されます。
では、心身機能の障害以外とは何かというと、物理面、情報面、制度(文化)面などの障壁(障害)という事になります。これらの具体例を挙げて説明することで、設問に対する解答として成立します。
【参考】首相官邸 https://www.kantei.go.jp/jp/singi/tokyo2020_suishin_honbu/ud2020kkkaigi/pdf/2020_keikaku.pdf

設問(1)-2

解答例:「公共機関だけでなく、民間事業者にも「合理的配慮の提供義務」が課され、罰則が明確化された。

ポイント:障害者差別解消法の改正により、令和6年(2024年)4月から、事業者にも障害者への「合理的配慮の提供」が義務化されました。障害者が利用しづらい設備やサービスに対し、過度な負担がない範囲で必要な対応を求めるものです。違反が続く場合、国から報告要求や指導、勧告が行われることがあります。
【参考】内閣府 https://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/sabekai_leaflet-r05.html

設問(1)-3

解答例(41文字):「障害者と高齢者が同じサービスを利用でき、地域の支援が効率化し、孤立感を軽減できる。

ポイント:共生型サービスは「障害」と「介護」の制度的枠組みを超えた取り組みで、障害者と高齢者が同じサービスを利用できる仕組みです。これにより、障害者にとっては支援が効率的に提供され、地域社会で孤立することなく生活できる環境が整います。また、多様な人々と交流することで心理的な孤立感が軽減され、生活の充実につながる点が重要です。
制限字数を守るために、無駄な言葉を省き、主語と述語を明確にしましょう。

設問(2)

解答例(98文字):「障害者の実雇用率が高いのは、障害者の特性に合わせた業務の幅が広く、多様な役割を担える環境が整っているためである。また、障害者支援の経験が豊富で、雇用に対する理解が進んでいることも要因と考えられる。

ポイント:図を見て解答するため、取っつきにくいと考えられがちですが、むしろロジカルシンキングのようなテクニックで解答する事も出来ます。仮に図に関する知識が全然なかった場合、どのように解答を導き出すかを以下に示します。
①問題文と図表を基に仮説を立てる
医療・福祉産業が他の産業より実雇用率が高い理由を考える際、問題文に示された「医療・福祉」というキーワードから、障害者が関わりやすい環境が整っている可能性を推測します。例えば、支援を行う場面が多い業種であるため、障害者を受け入れる体制や雇用環境が他産業より発達していると考えられます。
②医療・福祉産業の特徴を当てはめる
医療や福祉は身体介助や事務作業、生活支援など多岐にわたる業務が存在します。このため、障害者が自身の特性を活かせる役割を見つけやすいことが予想されます。また、障害者支援を日常業務で行うため、雇用に対する理解や配慮が他産業より進んでいると考えられます。
③他産業との対比を行う
一方で、製造業やIT産業などでは、特定の技能や身体的な要件が求められる場面が多いことが障害者雇用の妨げになっていると推測できます。これに対して、医療・福祉は柔軟な業務環境を提供しやすいことが実雇用率の高さに寄与していると推論できます。

第3問

設問(1)

解答例
①問題点:指導訓練室と水廻りの100mmの段差
改善方法:段差をフラット化してバリアフリーにするか、緩やかなスロープを設置することで車椅子などが安全に移動できるようにする。

②問題点:利用者出入口とスロープの開始位置が近すぎる
改善方法:スロープの開始位置を出入口から離れた場所に移動し、出入口周辺にスペースを確保することで、安全かつ円滑な移動を可能にする。

ポイント:解答例以外では、「指導訓練室と相談室で仕上げ材を変更する事は、異素材による躓き・転倒の可能性がある。部屋としての性質を分けたいのであれば、同一仕上げとして、色味だけを変更する」なども考えられます。なお、設問に「利用者の移動に関しての問題点」とあるので、“移動”にフォーカスして解答する必要があります。

設問(2)

解答例
問題点:指導訓練室とトイレの間に間仕切りがなく、利用者のプライバシーが確保されない
改善方法:重症心身障害児の利用に配慮した間仕切り(防音カーテンや3枚建て戸)を、指導訓練室とトイレの間に設ける。

ポイント:解答例以外では、「浴室を利用している場合に、他の人がトイレを使いにくい」みたいな答えも、ぎりぎりOKだと思われます。設問(1)は“移動”、(2)は“排泄環境”と、問われているポイントが異なりますので、その点に注意して解答しましょう。

設問(3)

解答例
問題点:指導訓練室がワンフロアであるため、各自が落ち着きたいときのプライバシーが確保されない
改善方法:利用者がリラックスできる環境を整えるため、カーテンや可動式パーテーションを設置し、必要に応じて個別に使用できるスペースを確保する。

ポイント:解答例以外では、「相談室がオープンな構造であるため、相談内容が他の利用者やスタッフに筒抜けになる。」なども考えられます。

設問(4)

解答例:「移乗用リフトやスライディングボードを導入することで、職員が抱きかかえる負担を大幅に軽減できる。特に、天井走行リフトは移動範囲が広く、利用者の安全性も確保できるため有効である。

ポイント:まず職員の負担軽減に直接効果的な具体策として、移乗用リフトやスライディングボードの導入を明示します。設問に文字数の指定はありませんが、必要に応じて天井走行リフトの詳細などを例示出来るとよいでしょう。

第4問

解答例


ポイント:設問の条件を確実に押さえる必要があります。その上で、引き出し線や文字(説明文)を加えて、採点者の心証を良くしましょう。
説明文は、それぞれの配置の根拠を示し、端的に表現します。特に麻痺の無い左片=健側(けんそく)に配慮したレイアウトである事をアピールします。なお、インテリアコーディネーター試験ではありませんので、無駄に見える空間があっても、多分減点はされないと思います。(例えば、机の両脇とか)
ちなみに、机とベッドの位置関係は逆でも差し支えないと思いますが、設問に「リモートワーク」とありますので、机が窓際※の方が良好な環境を演出している感があります。

※共用廊下に面する窓際では、他の住民の通行が気になるのでは?と思うかもしれませんが、「現状平面図」を見る限り、突き当りの部屋になりますので、ご本人夫婦以外の通行は最小限であると考えられます。(多分、そのあたりも考慮して問題が設定されていると思います。)