2023年の試験問題はコチラ。「禁無断転載」とありますので、問題文は載せられませんが、試験の解答と解説を行っていきます。
※この解説は、個人が作成したものであり、公式のものではありません。そのため、内容に誤りが含まれている場合があります。もし間違いを見つけた場合は、「お問い合わせ」フォームからご連絡ください。
第9問
ア-正答:②
(a)誤り:医療介護総合確保推進法案の成立を受け、2015年4月1日以降、指定介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)については、限られた資源の中で、より入所の必要性の高い方々が入所しやすくなるよう、原則要介護3以上に限定することとなりますが、要介護1又は2の方であっても、やむを得ない事情がある場合は、施設ごとに設置している入所検討委員会を経て、特例的に入所を認めることとしました。
【参考】厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12301000-Roukenkyoku-Soumuka/0000052324.pdf
(b)記述通り:2018年4月の介護報酬改定以降、介護老人保健施設(老健)は在宅復帰や在宅支援機能に応じて以下のように分類されています。
・超強化型: 在宅復帰・在宅療養支援等指標70以上、最も報酬が高い。
・在宅強化型: 在宅復帰・在宅療養支援等指標60以上、報酬は高水準。
・加算型: 在宅復帰・在宅療養支援等指標40以上、標準以上の報酬。
・基本型: 在宅復帰・在宅療養支援等指標20以上、報酬は平均的。
・その他: 在宅復帰支援が少ない施設、報酬は最低水準。
※在宅復帰・在宅療養支援等指標とは、老健施設が利用者の在宅生活復帰や地域支援にどれだけ貢献しているかを評価するための重要な基準です。
【参考】厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/000698290.pdf
(c)誤り:介護療養型医療施設は、医療介護総合確保推進法のもとで廃止方針が進められており、新規の設置は認められていません。これらの施設は介護医療院に移行することが促進されており、供給を増やす政策ではなく、段階的な廃止が進行中です。
頻出問題ですので、似たような名称と、それっぽい説明に惑わされないようにしましょう。
(d)誤り:介護医療院は、介護療養型医療施設の廃止に伴い、その代替施設として設置されました。介護療養型医療施設の機能を引き継ぎつつ、より包括的な医療・介護を提供することを目的としています。(c)が分かっていれば、分かる問題です。
なお、介護医療院は、医療と介護の両方を必要とする要介護者に対応するため、以下のように区分されています。
・Ⅰ型: 介護療養病床(療養機能強化型)相当のサービスで、医療依存度の高い入所者を受け入れる。
・Ⅱ型: 老人保健施設相当以上のサービスで、比較的安定した医療状態の入所者が対象。
いずれも、利用者の「看取り」を支えることも重要な役割のひとつと想定されています。
【参考】厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/kaigoiryouin/about/
(a)×、(b)〇、(c)×、(d)×で、②の組合せが正解となります。
イ-正答:②
(a)誤り:サ高住の登録は建物単位で行われます。事業者ごとに登録ではありませんので、事業者が複数の建物を運営する場合は、それぞれの建物ごとに基準を満たす必要があります。
(b)記述通り:各専用部分の床面積は、原則25㎡以上です。ただし、居間、食堂、台所そのほかの住宅の部分が高齢者が共同して利用するため十分な面積を有する場合は18㎡以上となります。
【参考】厚生労働省 https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/publish_sumai/
代表的な施設の情報は↓の通りです。
①特別養護老人ホーム | ②養護老人ホーム | ③軽費老人ホーム | ④有料老人ホーム | ⑤サービス付き高齢者向け住宅 | ⑥認知症高齢者グループホーム | |
根拠法 | 老人福祉法第20条の5 | 老人福祉法第20条の4 | 社会福祉法第65条 / 老人福祉法第20条の6 | 老人福祉法第29条 | 高齢者住まい法第5条 | 老人福祉法第5条の2 第6項 |
定義 | 入所者を養護することをを目的とする施設 | 入居者を養護し、その者が自立した生活を営み、社会的活動に参加するために必要な指導及び訓練その他の援助を行うことを目的とするる施設 | 無料又は低額な料金で、食事の提供その他日常生活上必要な便宜を供与することを目的とするる施設 | ①入浴、排せつ又は食事の介護、②食事の提供、③洗濯、掃除等の家事、④健康管理のいずれかをする事業を行う施設 | 状況把握サービス、生活相談サービス等の福祉サービスを提供する住宅 | 入浴、排せつ、食事等の介護その他の日常生活上の世話及び機能訓練を行う住居共同生活の住居 |
主な設置主体 | ・地方公共団体 ・社会福祉法人 | ・地方公共団体 ・社会福祉法人 | ・地方公共団体 ・社会福祉法人 ・知事許可を受けた法人 | ・限定なし (営利法人中心) | ・限定なし (営利法人中心) | ・限定なし (営利法人中心) |
1人当たり 面積 | 10.65㎡ | 10.65㎡ | 21.6㎡(単身) 31.9㎡(夫婦)など | 13㎡(参考値) | 25㎡ など | 7.43㎡ |
(c)記述通り:サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)は、高齢者が安心して生活できる住環境を整えることを目的として、国が供給促進に積極的に取り組んでいます。また、サ高住は、高齢化社会における重要な政策の一環として位置づけられ、特に民間事業者の参入を促すために、支援策が設けられています。
【参考】国土交通省 https://www.mlit.go.jp/report/press/house07_hh_000278.html
(d)誤り:政府は2025年までにサ高住を60万戸整備する目標を掲げていますが、この目標はまだ達成されていません。R6.10末時点での登録状況は、288,647戸となっています。
【参考】一般社団法人高齢者住宅協会 https://www.satsuki-jutaku.jp/doc/system_registration_01.pdf
(a)×、(b)〇、(c)〇、(d)×で、②の組合せが正解となります。
ウ-正答:④
(a)誤り:賃貸人(大家)は、自分の住宅を「セーフティネット住宅」として、都道府県や政令市、中核市に登録できます。市町村ではありません。登録された住宅の情報は、これらの自治体が広く公開し、住宅を必要とする高齢者や低所得者などがその情報を見て、大家さんに入居を申し込む仕組みです。
【参考】国土交通省 https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000055.html
(b)記述通り:賃貸人(大家)は、セーフティネット住宅として登録する際、法令で定められた全ての住宅確保要配慮者を対象とせず、特定の対象(例:高齢者のみ)に範囲を限定することが可能です。
なお、住宅確保要配慮者とは、以下の対象者です。
・高齢者
・障害者
・低所得者
・被災者
・外国人
・子育て世帯 など
(c)記述通り:賃貸人が家賃を市場家賃から引き下げた場合、その減額分に対して国や地方公共団体から補助を受けることができます。これにより、賃貸人が経済的な損失を被ることなく、低額所得者に住宅を提供するインセンティブが生まれます。
(d)誤り:居住支援協議会は、セーフティネット住宅制度の運営支援や促進を目的としていますが、自ら住宅の開発や管理を行うわけではありません。実際の開発や管理は、賃貸人(大家)や事業者が行います。この協議会は、運営支援や情報提供、関係者間の調整を主な役割としています。
【参考】東京都住宅政策本部 https://www.juutakuseisaku.metro.tokyo.lg.jp/juutaku_seisaku/ha_council/index.html
(a)×、(b)〇、(c)〇、(d)×で、④の組合せが正解となります。
エ-正答:③
①誤り:有料老人ホームや認知症高齢者グループホームは、介護保険施設よりも個室化が進んでいる場合が多く、「個室化が進まず、整備が遅れている」という事はありません。なお、介護保険施設とは、特別養護老人ホーム(特養)、介護老人保健施設(老健)、介護医療院・介護療養型医療施設の3種類を指します。
【参考】厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/shingi/2003/12/s1222-4d17.html
②誤り:近年はユニット型個室が推奨されているものの、コスト面や地域の需要によっては、多床室を含む施設が新設されるケースも存在します。とくにコスト面から、多床室の待機者は依然として多く、「空きが多く出ている」という表現は、正確ではありません。
【参考】厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001174196.pdf
③記述通り
【参考】厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/topics/kaigo/kentou/15kourei/3b.html
④誤り:現行の国の政策では、居住環境の質を確保するため、居室の面積や設備基準は維持されています。むしろ、個室化や居住環境の改善を目的に、基準を厳格化する方向性が取られることが多いです。居室面積の基準緩和は、高齢者の生活の質や安全性に関わるため、こうした方針は取られていません。