財務諸表 第2問

財務諸表

第2問の選択式の「穴埋め問題」です。問2については、財務諸表の問1を完全に理解していれば、それほど難しく感じることはありません。というのも、基本的な会計の流れや概念を押さえていれば、問2の内容はその延長線上にあるためです。
問題の傾向として、財務諸表や会計の基本的な概念を正しく理解し、それを適切な文脈に当てはめる力が求められます。特に、単なる暗記ではなく、与えられた文章の構造を把握しながら、どのような概念が求められているかを見極めることが重要になります。
設問の冒頭に「何について問われているか」が示されているため、それを意識しながら文脈を読めば、適切な選択肢を選ぶことができるようになっています。

特に解答の【ポイント】解説に重きを置きましたので、問題は直近の3回分に絞りました。
なお、設問の選択肢に「ケ」がない理由については、手書き解答に際して「サ」と混同するかと思われます。


第33回

建設業会計における棚卸資産および固定資産について述べた次の文中の( )の中に入れるべき最も適当な用語を下記の<用語群>の中から選び、その記号(ア〜チ)を解答用紙の所定の欄に記入しなさい。なお、【】にあてはまる用語は各自推定すること。

棚卸資産は、販売を目的に保有され、あるいは生産その他企業の営業活動で【】に保有される財・用役をいい、これらは、未成工事支出金および(1)の勘定で処理されている。未成工事支出金には、工事収益を未だ認識していない工事に要した材料費、労務費、外注費、経費といったの(2)ほか、特定工事に係る(3)、材料、仮設材料などが含まれる。また、(1)には、手持の工事用原材料、仮設材料、機械部品等の消耗工具器具備品、事務用消耗品が含まれる(未成工事支出金等で処理したものを除く)。

固定資産は、企業が営業目的を達成するために(4)にわたって使用し、あるいは保有する資産である。建設業法施行規則では、固定資産を有形固定資産、(5)および(6)の3つに分類している。有形固定資産には、建物、構築物、機械、運搬具、工具器具備品、土地、(7)などの有形物が含まれる。(5)には、特許権、借地権などの法律上の権利のほか、営業権のような事実上の権利が含まれる。また(6)に属するものとしては長期利殖を目的として保有する有価証券、子会社株式茜出資金、長期貸付金などのほか、長期の(8)があげられる。

<用語群>ア.繰延資産 イ.無形固定資産 ウ.完成工事高 エ.建設仮勘定 オ.減価償却累計額 カ.材料貯蔵品 キ.完成工事未収入金 ク.工事未払金 コ.短期間 サ.長期間 シ.投資その他の資産 ス.工事原価 セ.前受金 ソ.前渡金 タ.前払費用 チ.前受収益

【解答】
(1)カ. 材料貯蔵品
(2)ス. 工事原価
(3)ソ. 前渡金
(4)サ. 長期間
(5)イ. 無形固定資産
(6)シ. 投資その他の資産
(7)エ. 建設仮勘定
(8)タ. 前払費用

なお、【】に入るのは“短期間”です。

【ポイント】
この問題の解答を導き出すためには、建設業会計における棚卸資産固定資産の分類、およびそれぞれの勘定科目の役割を正しく理解することが重要です。以下のポイントに沿って考えると、正しい解答を導きやすくなります。

1. 棚卸資産の定義と処理方法

棚卸資産は、販売目的または企業の営業活動で短期間に保有される資産を指します。建設業においては、工事の進行に伴って消費される原材料や仮設材料などが含まれます。これらの資産は適切な勘定科目で処理される必要があります。

2. 問題文の論理構造を整理する

問題文の流れに沿って、各数字(1~8)の部分を適切な概念で補完することで解答を導き出します。

(1) 棚卸資産の勘定

これらは、未成工事支出金および(1)の勘定で処理されている。

未成工事支出金と並んで工事用の資材を管理する勘定科目を考えると、「材料貯蔵品」が適切なので、
(1)=材料貯蔵品 となる。

(2) 未成工事支出金に含まれる費用

未成工事支出金には、工事収益を未だ認識していない工事に要した材料費、労務費、外注費、経費といったの(2)ほか…

ここでは、工事のために支出された費用を指しているため、
(2)=工事原価 となる。

(3) 未成工事支出金に含まれる項目

特定工事に係る(3)、材料、仮設材料などが含まれる。

未成工事支出金に計上されるもののうち、工事に関連して事前に支払われるものとして「前渡金」が適切なので、
(3)=前渡金 となる。

(4) 固定資産の使用期間

固定資産は、企業が営業目的を達成するために(4)にわたって使用し…

固定資産は、一般的に長期間使用されるため、
(4)=長期間 となる。

(5) 固定資産の分類

建設業法施行規則では、固定資産を有形固定資産、(5)および(6)の3つに分類している。

固定資産は、「有形固定資産」「無形固定資産」「投資その他の資産」の3つに分類されるため、
(5)=無形固定資産 となる。

(6) 固定資産の分類

有形固定資産、(5)および(6)の3つに分類している。

無形固定資産の次にくる分類は「投資その他の資産」なので、
(6)=投資その他の資産 となる。

(7) 有形固定資産の具体例

建物、構築物、機械、運搬具、工具器具備品、土地、(7)などの有形物が含まれる。

有形固定資産の一種として、工事中の建設費用を計上する「建設仮勘定」が適切なので、
(7)=建設仮勘定 となる。

(8) 投資その他の資産の例

長期利殖を目的として保有する有価証券、子会社株式茜出資金、長期貸付金などのほか、長期の(8)があげられる。

長期的な費用計上を行う勘定科目として、「前払費用」が適切なので、
(8)=前払費用 となる。

3. まとめ

このように、建設業に特有の会計処理を理解し、適切な勘定科目を選択することが、この問題を解くポイントでした。

第34回

費用および費用配分の原則に関する次の文中の( )の中に入れるべき最も適当な用語を下記の<用語群>の中から選び、その記号(ア〜チ)を解答用紙の所定の欄に記入しなさい。

期間利益は期間収益からそれに対応する費用を差し引いて計算される。この対応計算を(1)的に行うためには、対応計算に先だって、財・(2)の減少部分を収益の獲得活動と関係をもつ部分とそれ以外の部分とに明確に区別しておくことが望ましく、かつ、必要なことはいうまでもない。企業会計原則においても、こうした理由から、収益の獲得活動と関係をもつ部分、すなわち「費用」と、それ以外の部分、すなわち「(3)」とを明確に区別すべきものとしている。

企業会計原則の「貸借対照表原則五」は、費用配分の原則について、資産の取得原価を所定の方法に従い、計画的・(4)的に各期に配分すべきであるということを要請している。ここにいう「所定の方法」とは、一般に公正妥当と認められた費用配分の方法をいう。たとえば、(5)資産原価の配分方法には個別法、先入先出法、平均原価法などが認められる。

一方、配分方法の選択について、企業会計原則は企業の自主的な判断に委ねる立場をとっているが、これを企業による配分方法の恣意的な選択を容認するものと解してはならない。つまり、「貸借対照表原則五」にいう「計画的」とは、(1)的な配分計画のもとに企業の特殊性を十分に考慮して適正な期間利益の計算を(6)するという意味での妥当な方法の選択を意味する。このようにして選択された配分方法は、正当な理由のないかぎり、毎期(7)して適用されなければならない。つまり、「(4)的」とは、妥当な方法の機械的適用を意味する。

<用語群>ア.経済 イ.用役 ウ.固定 エ.保証 オ.再検討 カ.規則 キ.損失 ク.検証 コ.負債 サ.経常 シ.損金 ス.棚卸 セ.経費 ソ.合理 タ.流動 チ.継続


【解答】
(1)ソ. 合理
(2)イ. 用役
(3)キ. 損失
(4)カ. 規則
(5)ス. 棚卸
(6)エ. 保証
(7)チ. 継続

【ポイント】
この問題の解答を導き出すためには、費用配分の原則と企業会計原則の考え方を正しく理解することが重要です。以下のポイントに沿って考えると、正しい解答を導きやすくなります。


1. 費用と収益の対応関係

企業の期間利益は、収益からそれに対応する費用を差し引いて計算されます。この「対応計算」を適切に行うためには、収益に対応する費用を正しく計上することが求められます。そのため、費用配分の原則が重要になります。

2. 問題文の論理構造を整理する

問題文の流れに沿って、各数字(1~7)の部分を適切な概念で補完することで解答を導き出します。

(1) 費用配分の原則

期間利益は期間収益からそれに対応する費用を差し引いて計算される。この対応計算を(1)的に行うためには…

ここでは、収益と費用の対応関係を適切に計算するために、客観的で合理的な方法が求められるので、
(1)=合理 となる。

(2) 収益の獲得に伴う減少

対応計算に先だって、財・(2)の減少部分を収益の獲得活動と関係をもつ部分とそれ以外の部分とに明確に区別しておくことが望ましく…

ここでは、収益を得るために減少するものとして、企業活動で消費されるサービスや労力を表す「用役」が適切なので、
(2)=用役 となる。

(3) 費用に計上されない部分

収益の獲得活動と関係をもつ部分、すなわち「費用」と、それ以外の部分、すなわち「(3)」とを明確に区別すべき…

費用として計上されず、損失として扱われる部分を指しているため、
(3)=損失 となる。

(4) 計画的・〇〇的な費用配分

資産の取得原価を所定の方法に従い、計画的・(4)的に各期に配分すべき…

費用配分は計画的に行われるべきものであり、規則的な処理が求められるため、
(4)=規則 となる。

(5) 具体的な費用配分方法

たとえば、(5)資産原価の配分方法には個別法、先入先出法、平均原価法などが認められる。

ここでは、資産の原価を配分する方法の代表例として「棚卸資産」に関する計算方法が挙げられているので、
(5)=棚卸 となる。

(6) 妥当な費用配分の目的

企業の特殊性を十分に考慮して適正な期間利益の計算を(6)するという意味での妥当な方法の選択を意味する。

ここでは、妥当な利益計算を行うことを意味する語が適切であり、「保証」が適当なので、
(6)=保証 となる。

(7) 毎期〇〇して適用

つまり、「規則的」とは、妥当な方法の機械的適用を意味する。

費用配分の原則では、一度採用した方法は継続して適用されるべきであり、この文脈では「継続」が適切なので、
(7)=継続 となる。

3. まとめ

このように、費用配分の原則を理解し、企業会計原則の意図に沿った用語を選択することが、この問題を解くポイントでした。

第35回

負債と資本の区別に関する次の文中の( )の中に入れるべき最も適当な用語を下記の<用語群>の中から選び、その記号(ア〜チ)を解答用紙の所定の欄に記入しなさい。

貸借対照表上の貸方項目は、企業に投下された資金の(1)を示す。このような資金は契約もしくは慣習に従いそれぞれの調達先にいずれは返還されなければならない。したがって、このような貸方項目は、資金提供者の観点からみれば、彼らが企業の資金(ないし資産)に対して有している抽象的な(2)を表すものとみることができる。資金提供者が企業の資産に対して有する(2)は一般に「持分」とよばれる。持分は一般にその源泉の違いによって(3)持分と(4)持分とに区別される。

(3)持分は、(3)が企業資産に対してもっている(2)をいう。それは企業がその所有する資産をもって弁済しなければならない債務を意味するところから、会計上「負債」とよばれる。貸借対照表の貸方項目のうち支払手形、工事未払金、(5)、借入金、社債などが、この(3)持分を構成する。

これに対して(4)持分は、(6)などの企業主が企業の資産に対してもっている(2)をいう。それは企業経営の元本を構成するところから会計上「資本」とよばれるが、今日の企業の代表的な組織形態が株式会社であるところから(6)持分とよぶことも多い。株式会社の場合、(4)持分には、貸方項目のうち資本金、資本準備金などの出資額のほか、留保利益たる(7)、任意積立金などが属する。

<用語群>ア.運用形態 イ.完成工事未収入金 ウ.調達源泉 エ.有権 オ.債権者 カ.債務者 キ.未成工事受入金 ク.未成工事支出金 コ.請求権 サ.利益準備金 ソ.投資家 シ.資産価値 ス.受託者 セ.株主 タ.その他資本剰余金 チ.出資者


【解答】
(1)ウ.調達源泉
(2)コ.請求権
(3)オ.債権者
(4)チ.出資者
(5)キ.未成工事受入金
(6)セ.株主
(7)サ.利益準備金

【ポイント】
この問題の解答を導き出すためには、貸借対照表(B/S)の基礎概念負債と資本の区別を正しく理解することが重要です。以下のポイントに沿って考えると、正しい解答を導きやすくなります。

1. 貸借対照表の基本構造を理解する

貸借対照表(B/S)は、資産 = 負債 + 資本 という会計の基本原則に基づいて構成されており、
貸方(右側)には「資金の調達元」が記載されます。

  • 負債(他人資本):借入金や社債など、外部の資金提供者(債権者)に対して返済義務のあるもの
  • 資本(自己資本):株主などの出資者からの資金で、基本的に返済義務がないもの

2. 問題文の論理構造を整理する

問題文の流れに沿って、各数字(1~7)の部分を適切な概念で補完することで解答を導き出します。

(1) 資金の調達源泉

貸借対照表上の貸方項目は、企業に投下された資金の(1)を示す。

ここでは、貸借対照表の貸方(負債 + 資本)は企業の「資金の調達源泉」を表しているので、
(1)=調達源泉 となる。

(2) 貸方項目が表すもの

資金提供者の観点からみれば、彼らが企業の資金(ないし資産)に対して有している抽象的な(2)を表す。

貸方項目が示すのは、資金提供者が持つ企業の資産に対する権利であるため、
(2)=請求権 となる。

(3) 負債持分

持分は一般にその源泉の違いによって(3)持分と(4)持分に区別される。
(3)持分は、(3)が企業資産に対してもっている(2)をいう。

持分には、負債持分(他人資本)と資本持分(自己資本)の2種類がある。
ここでは、企業資産に対して請求権を持つ「(3)」は、債権者となるので、
(3)=債権者 となる。

(4) 資本持分

(4)持分は、(6)などの企業主が企業の資産に対してもっている(2)をいう。
それは企業経営の元本を構成するところから会計上「資本」とよばれる。

債権者と対になる持分は、株主や出資者が持つ自己資本(純資産)なので、
(4)=出資者 となる。

(5) 負債の例

貸借対照表の貸方項目のうち支払手形、工事未払金、(5)、借入金、社債などが、この(3)持分を構成する。

この文では「負債」に該当する項目を補う必要があり、工事に関する未払金に関連する項目を選ぶのが適切。
選択肢の中で該当するのは「未成工事受入金」なので、
(5)=未成工事受入金 となる。

(6) 株主の持分

今日の企業の代表的な組織形態が株式会社であるところから(6)持分とよぶことも多い。

企業の自己資本を提供するのは、株主であるため、
(6)=株主 となる。

(7) 留保利益

株式会社の場合、(4)持分には、貸方項目のうち資本金、資本準備金などの出資額のほか、留保利益たる(7)、任意積立金などが属する。

留保利益に該当するものは、利益準備金なので、
(7)=利益準備金 となる。

3. まとめ

このように、貸借対照表の基本構造を理解し、「負債」と「資本」の違いを明確にすることが、この問題を解くポイントでした。